top of page
印刷機で、印刷と同時に印刷面を保護したり、
光沢感 / 非光沢感を与える表面加工があります。
それは、ニス加工です。
007・008でもご紹介したPP加工や、UVニス、水性ニス、プレスコートなど、
用途や目的によって様々な専用の機械で行う表面加工がありますが、
今回はオフセット油性印刷と同時に行うニス加工についての検証です。
このニス加工は、
印刷と同時に加工できるためコストも納期も抑えられますし、
さらなる後加工への適性も高いのが大きなメリットです。
オフセット油性印刷で通常使われるニスの中で、
光沢感を出し、艶やかな仕上がりになるものをグロスニス 、
光沢感を消し、マットな仕上がりになるものをマットニスと呼びます。
グロスニスが光沢感を、マットニスが非光沢感を持って見えるのは、
人間の目にどのように光が入ってくるかで決まってきます。
※イラストはイメージです
人間の目は、光の反射でものを見ています。
しっかり反射され強い光が目に入ってくると、鮮明で艶やかに見え、
乱反射して分散された光が目に入ってくると、ぼやけたように見えるのです。
「表面保護のためのニスではなく、そのニスの質感も楽しみたい!」
というご相談をいただくことがあります。
そして、そういったご相談の中で
「ニスって1度刷るより2度刷り重ねる方が効果があるんじゃないの?」という、
“ なんとなくそんな気がするけど、本当にそうなんだろうか? ”
と感じているデザイナーの方も多いように感じます。
印刷会社としての長年の経験で、ニスの刷り方による
効果の違いをお答えすることはできますが、
やっぱり見てみないとイメージしづらいですよね。
ということで
検証
印刷物にニスを数回刷り重ねた時の、その効果の違いを見てみよう
検証スタート
検証物
ニスを引くとき、 基本的にCMYK+ニスの5色(5版)の順番で一気に印刷することが多いですが、 今回はニスを引かないものも含め、計6パターンでニスの比較テストをします。使用した印刷機は、オフセット印刷機の5色機(5色を一気に印刷できる機械)です。
グロスニスとマットニスそれぞれを上記パターンで見ることができるように、縦方向に伸びたニスのベタ版を作成 (ニスは最大4回 刷り重ねます) 。こちらを検証物として印刷します。
ちなみに、グラデーションは各色ベタ(100%)〜白色(0%)総和のグラデーションです。
CMYK4色のベタだと一番濃いところが400%のリッチブラック になってしまうので、現実的なものとして一番インキ量が多い部分をベタ300%に抑えるため、
今回はイエローを排除した【K/C/M】の3色のみでデータを作成しています。
用 紙 : OKトップコート+(135kg)
OKトップコートマットN(135kg)
ヴァンヌーボVスノーホワイト(150kg)
インキ : オフセット用油性パウダーレスインキ
オフセット用油性OPニス(グロスタイプ・マットタイプ)
色 数 : 最大7色(CMK+ニス×4)
印刷結果
実際に印刷したものを、ニスごとに見ていきます。
【グロスニス】
グラデーションと同時印刷したグロスニス(1パス)と、
グラデーションの翌日に印刷したグロスニス(1胴)。
どちらもニスは1度引きですが、見たところ
翌日に印刷したニスの方が光沢がありグロス感が高いです。
これは、インキが乾いていない印刷部分には、後に印刷するインキが
全て乗り切らない現象(トラッピング)のためです。
グラデーションを印刷した翌日にニスを印刷すると、
グラデーションのインキは乾いているため、しっかりニスが印刷面に乗ります。
さらに、2度・3度・4度とニスを重ねれば重ねるほど
グロス感は上がっていることがわかります。
しかしここで問題発生。
2,3,4度ニスを重ねた部分にブロッキング(裏移り)発生です。
(用紙によって、裏移りの程度に違いがあります)
ニスを重ねると、インキの膜厚が上がることでグロス感は上がりますが、
インキ量が増えれば印刷のリスクも増えることがわかります。
【マットニス】
グロスニスと同様、グラデーションと同時印刷したマットニス(1パス)と、
グラデーションの翌日に印刷したマットニス(1胴)。
どちらもニスは1度引きですが、見たところグロスニスと同様
翌日に印刷したニスの方が効果が高く、マット感が上がっています。
そして、2度・3度・4度とニスを重ねれば重ねるほど
マット感は上がっていくだろうと思われるかもしれませんが、実はその逆。
マットニスは重ねれば重ねるほどマット感は薄れて光沢感が出てくるのです。
なぜマットニスを刷り重ねると、マット感が薄れてしまうのか。
マットニスには “マット剤” が入っています。
このマット剤が、印刷されるマットニスインキの膜厚から
はみ出ることによって光の乱反射が起き、印刷表面がマットに見えます。
マットニスを重ねていくことはマットニスの膜厚が上がることを意味し、
それによってマット剤が埋もれていきます。
埋もれたマット剤は乱反射を起こすこともなく、
ニスの表面は平らで艶やかな質感になるため、グロス感が上がるのです。
※イラストはイメージです
また、マットニスもグロスニスと同様
2,3,4度ニスを重ねた部分にブロッキング(裏移り)発生しました。
(用紙によって、裏移りの程度に違いがあります)
こちらもインキ量が増えれば印刷のリスクも増えることがわかります。
用紙によってもグロス感・マット感の違いがありますので
実際の検証資料をご覧になってください。
裏移りなどを防止するためにニスを使用する場合は、
用紙の風合いを生かすような工夫もできますので、お気軽にご相談ください。
bottom of page