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印刷において、ニスは印刷物保護のために使用されることが多いですが、
ニスによる視覚効果を狙ったデザインの表現手段として
使用する場合もあります。
特によくいただく「絵柄を際立たせる役割として使いたい」「ニス全体にデザイン性を持たせたい」というご相談からも、ニスの可能性に興味をお持ちのデザイナーの方は多いのだと感じています。
デザインの表現としてニスを使用した事例を2つご紹介します。 こちらは、弊社の会社案内(タトウ)です。
使用用紙はミラーコート・プラチナ。
ピカピカなこの用紙の表面にマットニスのみを印刷することで絵柄を表現しています。
これだけでもかなり表情が変化しているのがわかります。
デザイナーのための印刷研究所【実験・検証室 010|ニスを重ねる】でも、ニスに関する検証を行いました。
こちらでは、グロスニスとマットニスをそれぞれ複数回刷り重ねることによる光沢感・非光沢感の度合いを比較検証しています。印刷回数やニスの種類の違いによって表情が変化しているのがわかる内容になっています。
【実験・検証室 010 ニスを重ねる】https://www.towaprintinglab.com/project-10
このように、ニスの視覚効果を狙った “デザインの表現手段” として、
ニスは様々な可能性を秘めています。
今回は、その中でも特に多く使われている、
印刷物で絵柄の一部を際立たせるためのニス
の効果的な使い方についてお話ししていきたいと思います。
印刷物で絵柄の一部を際立たせたり、紙の風合いを変化させたい時には、
スポットニス加工 を行います。
スポットニス加工は、印刷物全面にニスを引くのではなく、ニス版をつくることで狙った箇所のみにニスを引く手法です。 例えば商品などを際立たせたい場合には、その部分のみにグロスニスをねることでツヤ感を演出する方法などがあります。
特にその効果が強い印刷加工に、UV厚盛 という加工があります。
透明ニスを厚く印刷し、UV照射で固める印刷加工です。クリアで厚くつややかな仕上がりが特徴で、見た目にも大変インパクトがあります。 これは、任意の絵柄を際立たせるのに最適な印刷加工方法と言えます。
ただしUV厚盛には若干コストがかかるため、少しでもコストを抑えたい案件の場合には手が出しにくいかと思います。
そんな時にオススメなのは、やはりオフセット油性印刷機でインライン印刷ができる、一般的なニス加工です。
印刷物を保護する目的ではなく、デザインの表現手段として…
特に絵柄の一部分を際立たせるニスの効果的な使い方を見てみたい!
というデザイナーの皆様のために
検証
ニスをスポットで使用することで
絵柄を際立たせる効果がどの程度あるのか
様々な用紙や絵柄で実際に印刷してみよう
検証スタート
事前模索
まず、スポットニスの効果をある程度把握するため、検証物を作成する前段階のテストをしました。
絵柄は、様々な色・画像・イラストを用意します。
ニスは、スポット(≠全面)で入れます。種類はツヤのあるグロスニスとマット感のあるマットニスの2種類を用意します。
ニス版は、画像・イラストの絵柄に合わせた形にし、その部分にニスを引くものとその部分の周りにニスを引くものを用意します。
テスト印刷データはこちら(4色データとニスデータ)
用 紙:OKトップコート(135kg)
OKトップコートマットN(135kg)
片面クロームカラー(135kg)
インキ:オフセット用パウダーレスインキ(CMYK)
グロスニス(ベストワン キレイナOPニス)
マットニス(オフセット用油性OPニス・マットタイプ)
色 数:5色(CMYK+各ニス)
用紙は、通常よく使用される一般的なコート紙とマット紙、さらにニスの効果が出やすいと言われているキャストコート紙の3種を用意しました。
ニスと用紙の組み合わせ、計6パターンを印刷していきます。
絵柄の一部分を際立たせるには、
際立たせたい絵柄とそれ以外の絵柄に 質感の差 が出ることが重要になります。
「絵柄の一部分にニス(特にグロス)を重ねれば、その部分がツヤ感を伴って際立つだろう」と考えがちですが、実際に絵柄が一番際立ったのは、意外にも際立たせたい絵柄の背景にマットニスを引いたものでした。
例えばマット紙にグロスニスを引いた場合と比べると、用紙単体が持つマット感※ よりマットニスによって表現されるマット感の方が強いので、それ以外の場所との質感の差が大きく出るのが理由です。
※インキによって若干のツヤ感が出るのも影響します
また、絵柄や色によって、ニスの効果にも影響があることが見受けられました。 傾向として、絵柄はガチャガチャしていないシンプルなもの、目立たせたい絵柄の輪郭がしっかりしているもの、色はどちらかというと濃いめの色、などが今回の手法には効果的でした。
特に、絵柄に情報量が多く雑多なものは、人間の目が受け取る情報が絵柄の様々な要素に引っ張られてしまうため、効果が薄れる傾向にありました。
絵柄・光源の位置・見る角度・求める表現などによって変わってきますが、質感の差という視点でいうと、 用紙とニスの組み合わせで任意の絵柄が際立った順番は下記の通りです。
1. キャストコート紙 × マットニス
2. コート紙 × マットニス
3. マットコート紙 × マットニス
4. マットコート紙 × グロスニス
5. コート紙 × グロスニス
6. キャストコート紙 × グロスニス
キャストコート紙 × マットニスの組みわせが最も効果が高いという結果になりましたが、前にも触れた通り、印刷物を作るときに コストの問題 は無視できません。
実際に「予算が厳しい」「コストをできるだけ抑えたい」というご相談はとても多いです。
そこでわたしたちは、キャストコート紙を使用した時の効果までは行かないまでも、【コート紙を使用して、際立たせたい絵柄の背景にマットニスを引いたもの】が想像以上に効果を発揮していることに注目。コスト的にも現実的に使える組み合わせだと考え、今回はこちらを印刷検証資料として制作することにしました。
用 紙:OKトップコート+(135kg)
インキ:オフセット用パウダーレスインキ(CMYK)
マットニス(オフセット用油性OPニス・マットタイプ)
色 数:5色(CMYKマットニス)
印刷検証資料の印刷データはこちら(4色データとニスデータ)
印刷結果
際立たせたい絵柄(上から、ワイングラス・車体・水滴)の部分は、コート紙にカラー印刷をした通常の印刷物の質感。それ以外の背景部分にはマットニスを引いて、コート紙とインキのツヤ感を抑えたマットな質感になっています。
これにより際立たせたい絵柄部分との質感のコントラストができるため、その部分が際立って見えます。
ちなみに、3枚の写真の隣にはそれぞれ同サイズの色ベタのオブジェクトを配置しています。写真部分と同じニス版でニス引きをしていますので、そちらも参考にしてください。
(補足)絵柄・色による影響
事前模索のところでも触れましたが、ニスによって絵柄を際立たせる表現は、絵柄や色による影響があります。 お渡しする印刷検証資料は、比較的ニスによる効果がわかりやすい色・絵柄を選んでいます。
傾向として、絵柄はガチャガチャしていないシンプルなもの、目立たせたい絵柄の輪郭がしっかりしているもの、色はどちらかというと濃いめの色などが今回の手法には効果的です。
特に、絵柄に情報量が多く雑多なものは、人間の目が受け取る情報が様々な要素に引っ張られてしまうため効果が薄れる傾向にあります。
ご制作の際には、上記を意識した絵作りをすることをおすすめします。
おまけ
今回の検証資料は際立たせたい絵柄部分以外にマットニスを引いていますが、左上の方にある014という文字はニスを逃してあります。白紙と、引いたニスとの質感の差のみで表現していますので、白紙上でのニスによる表現をご確認いただけます。
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